ドラゴンクエストZ〜エデンの戦士たち〜 |
総合評価 |
+B |
王道RPGのプレステ参入
日本ゲーム業界にRPGというジャンルを普及させた王道RPGドラクエ。
Zは、ドラゴンクエストがプレイステーションにフィールドを移した最初の作品です。
マップは3D背景に2Dドットのキャラを乗せ、
360度視点切り替えを用いた新発見をユーザーに提供。
世界観もこれまでのドラクエとは全く異なったもので、規模も大きいといった、
ほぼ全くと言って良い、新しい形のドラクエ
になっています。
転職でパーティーをカスタマイズ、カジノなども要素として健在。
多くのユーザーから愛されたドラクエがパワーアップして帰ってきた。
誰もが期待したこの作品はプレイステーションソフトとしては最高出荷本数を記録しました。
しかしこのゲーム、今までのドラクエと比較された結果、とんでもない評価を下されてしまった
のです。
評価点と失点
評価点
ドラクエが持つ理解に苦しまない作りの基本要素は相変わらずといって良い。
徐々に世界が広がり、新しい場所が発見されていくという流れは、冒険に必要な好奇心を駆り立てる。
場所によりストーリーが異なるものの、そのほとんどのシナリオは高い完成度といえる。
鬱要素は結構多いが、その鬱シナリオもしっかりまとまっており、感情移入しながらのプレイがしやすい。
特に『フォーリッシュのからくり』『プロビナの神父』『コスタールの悲劇』は筆者にとって非常に高評価。
また、随所随所で伏線も張られており、最終的にはその全てが回収されていくので違和感もない。
過去の世界のA地点と、別のB地点に繋がりがあるなど、進めていくと『!』な展開にも評価を与えたい。
前作から引き続き、転職システムが採用されており、基本職・上級職への転職が可能となっている。
これにより新しい呪文や特技を修得したり、能力値の底上げを行えたり出来るため、自由度も高い。
さらに今作にはモンスター職という新たな要素も追加され、より自由度が高まっていると言える。
仲間との会話システムが採用され、自分のパーティメンバーにしっかりした個性・性格付けがなされている。
街中、ダンジョン内、イベント中、戦闘中などいたる所で仲間と会話が出来るため、
一緒に冒険している感覚になってプレイできる。また、会話からヒントを教えてくれる場面もあり、重宝する。
ちなみに今作の仲間の1人であるマリベルは、『時代が早すぎたツンデレ』として非常に有名である。
プレイステーションで発売された今作はCD規格なのだが、ロード時間が非常に短くて快適。
フィールドから街や洞窟に画面が切り替わる際にも、待ち時間はほとんど無い。怖いくらい進行がスムーズ。
CD規格の他社製品と比較すればよくわかる。ただしこの技術の代償は非常に大きなものとなったが・・・。
先述した快適な進行は戦闘面でも活きており、エフェクトが派手になっただけでなく処理落ちもなし。
エンカウントから戦闘画面に移行する際にも、ほぼ読み込みは無し。前作以上に進行が滑らかである。
ドラクエでは御馴染みの『すぎやまこういち氏』が作曲したBGMは、どれもこれも非常に良い。
特に漁村フィッシュベル、封印された街、ボス戦、エンディングで使用される曲は筆者の大のお気に入り。
過去のドラクエも名曲揃いだが、今作は次回作の[や\を含めて考えても頭一つ抜けている。
失点
今作最大級の失点としても有名であろうフリーズ頻度の高さは擁護のしようがない。
画面の切り替わり時、イベント中などでも起こる。筆者も数回煮え湯を飲まされている最大級の問題点だ。
そして、ある場所のボス3連戦に勝ち残った直後が最もフリーズ確率が高い。運次第では悲惨な目に合う。
このフリーズ頻発は、評価点にあげた『ロード時間の短縮技術』による代償で、高くつく結果となった。
後期出荷版ではこの確率は大きく低下しているものの、起こらないわけではないので要注意。
進行上必要不可欠な石版システムが非常に面倒で、詰む危険と隣り合わせの代物と化している。
『石版のかけら』を台座にはめる事によって新たな舞台へと進んでいくのだが、この入手方法が分かりづらい。
イベントをこなすと貰えたりするのだが、多くはダンジョン内部の宝箱の中にあったりする。
カジノ・メダル王の景品になっていたり、視点変更でドアを見つけないと入手できないなど非常に不親切。
レブレサックという村のシナリオは、筆者だけでなく多くのプレイヤーから大々的な批判を浴びている。
内容こそ割愛するが、このイベントにおける村人の言動はプレイヤーの心情を逆撫でするもの。
過去世界は最終的に許せる終わり方だが、現代のこの村は村長を筆頭に擁護できない酷さがある。
子供たち、宿屋のおばさん、リフの親父がいなかったら、村が崩壊してくれても心が痛まない・・・だろう。
先述したがストーリーは評価できると同時に、鬱要素も多くなっているため、人によっては受け付けにくい。
最初に訪れるウッドパルナの世界からして、今作上位に食い込む鬱シナリオ。人によっては嫌悪感が残る。
筆者は鬱要素を含めて評価しているが、ウッドパルナなど一部の場所では報われない気持ちが残る事も。
ストーリーの完成度と量は何度も言うが評価点である。しかしこのゲーム、プレイ時間が非常に長い。
というのも、ドラクエ名物おつかい要素が比較的多く、石版・メダル捜索などにも時間がかかるのである。
これにより100時間は当たり前。筆者も今作が初ドラクエだったとはいえ、クリアに140時間を費やした。
ちなみに、この100時間以上はザラという点は賛否両論でもあり、筆者も大きな失点とは見ていない。
転職システムにおける、特定職業の弱さが顕著。場合によっては無職状態の方が強いため、ありがたくない。
特に冷遇されているのは『まほうつかい』で、特技の使い勝手が良いために呪文の価値が低くなっている。
しかもこの職業に転職すると、ビックリするほど打たれ弱くなるため、迂闊に転職すると瞬殺されることも。
モンスター職は自由度の底上げになっているが、転職条件が非常に困難。おまけ程度に考えるべきか。
CD規格へとフィールドを変えた結果、通常の描写性は高まったのだが、ムービーが呪われている。
鳥山明氏のデザインをそのまま3D化させて動かしたために、動きや表情などに大きな違和感が生まれた。
この時期に発売された作品などと比較すると完成度は低いと言わざるを得ない。もちろん鳥山氏は悪くない。
よく見てプレイすれば評価点もまた多し
評価できる部分が非常に多く、しかも評価点の配点も高いゲームです。
ですが、フリーズ・石版などの目に余る問題点が目立っており、失点も多いために『A』という評価は出来ません。
ネット内ではよく、『RPG失格』『クソゲー』などと散々に言われている今作ですが、
Zを一番とする人も決して少なくありませんし、相応の評価点があるため、一概に散々な事は言えないでしょう。
確かに今作は、ドラクエとしては異端なシナリオとシステムであり、キャラも目立たない印象ですが、
それを差し引いてもシナリオの完成度とロード時間の短い快適な進行は大いに評価されて然るべきです。
そして今作はクソゲーではない。あくまでもドラクエとしては・・・という印象が根付いてしまった残念なゲームです。
失点ばかりに目を向けるのではなく、
大いに評価できる部分から目を背けないで欲しいと筆者は願っています。