エリー 〜人のために生きた儚き機械兵士〜 |
主要タイトル | ドラゴンクエストZ〜エデンの戦士たち〜 |
プチ解説 | 技師ゼボットにより、殺戮と破壊の思考を削除され生まれ変わったロボット。 ドラクエZを語る上では外せない悲劇のキャラクターとして多くのプレイヤーに知られる。 |
ドラクエZは、様々な封印された世界の過去へと遡り、解放していくのが主ですが、
それ故にかなり長いゲームであると言われています。実際、そうなんですけども。
このゲームには、チョイ役扱いながらも味のある、またはドラマを作ってくれるキャラが多く、
今回取り上げる『エリー』は、ドラクエZ屈指とも言えるほどに印象に残るキャラクターです。
石版で行ける5番目の世界『フォーリッシュ地方』は、人類とカラクリ兵軍団の戦闘が描かれます。
この世界で登場するエリーという名には意味がありますが、それは後述するとします。
人里離れた場所にまでからくり兵は侵攻してきましたが、
損傷が激しく、動くのがやっとの満身創痍状態であり、倒れてしまいます。
その場にいた技術者『ゼボット』は、人間嫌いで人里離れた場所に研究所を置き、拠点としていましたが、
その場にいた兄の兵士長と主人公に、コイツを直すと宣言します。
からくりに興味があったゼボットは、
人類以外が作ったからくり兵の構造に大きな関心を抱き、改造をするというのです。
当初は人類の存亡をかけた危機的状況において非協力的だったゼボットは、
この迷い込んできたからくり兵をサポート役に改造することで協力するようになります。
さて、この改造されたロボットにつけられた名前がエリーです。
エリーはこのイベント前には、ゼボットが作った『からくりメイド』に付けられていたのですが、
そのメイドロボは喋ることはもちろん、まともに歩行できないものでした。
歩行も出来ておおよその行動を取れる、機械音声で喋ることもできる兵士ロボットが、
その名前を継承したというわけです。
ですが、この名前には意味がありました。ゼボットが人間嫌いになった事件を話しましょう。
作中では、度々ゼボットがエリーの名前を出します。
エリーは、元々フォロッド城王妃の名前であり、ゼボットはエリーと恋仲だったようです。
いつか将来は結婚もする・・・ということだったのでしょう。
しかしエリーはゼボットの知らないところで死亡してしまいます。
ゼボットの兄である兵士長トラッドと共に、狩りに出かけ、魔物(狩りの獲物?)に襲われたのです。
この悲惨な事件を知ったゼボットは、愛するエリーを死なせたのは人間であるという事を憎み、
同時にエリーに対して愛する気持ちと共に、
自分を置き去りにした憎しみを抱くに至ります。
ゼボットは事件をきっかけに人間不信になり、人里離れた場所に拠点を置いていたのです。
ゼボット自身は、辛辣かつ微塵も愛想を感じない発言をしますが、
それは全て愛するエリーがきっかけになってしまったのです。愛ゆえにそうなってしまったのでしょう。
からくり兵からエリーという名のロボットに生まれ変わり、
人間のためにサポートという形で協力し、ついに主人公達の手により平和が訪れます。
ロボットエリーは、ゼボット共にフォーリッシュの街に帰還しますが、
エリーの姿形は街を襲い犠牲者を生んだからくり兵そのもの。
街の人々はエリーに対して恐怖と怒りをぶつけます。ゼボットはエリーと共に退散。
人々の悪しき記憶により、人類を救ったエリーは迫害を受けることになってしまったのです。
(※事情が事情だけに、人々の反応を批判できるものではないのですが。)
ゼボットとエリーは、王様への謁見を済ませた後に、
自分の住処である西の研究所に戻ります。ゼボットは主人公達に対して、
「もう放っておいてくれ。僕にはエリーがいる。それ以外に何の望みもないんだ。」
という感じの発言をして、最後まで人間嫌いが直ることはありませんでした。
庭では機嫌が良さそうに過ごすエリーの姿が確認できます。心を持たない故に、自分の意思すらも分からないからくり兵。
エリーもこの時点ではそうでした。そう、この時点では・・・。
現代でゼボットの住処に行くと、ゼボットの看病をするエリーの姿が。
病気になったゼボットのために元気を出してもらえるようスープを作っていました。
しかしゼボットもエリーも数百年前の存在であり、ゼボットはベッドの上で既に屍と化していました。
しかしエリーは先述したとおり心を持いないせいか、現実もといゼボットの死を把握できないため、
ゼボットはずっと病に伏していると思い込んでおり、ゼボット死後からずっとスープを作り続けていたのです。
色々と揉め事やイベントがあり、一時的にゼボットと引き離されたエリーですが、
主人公達の取り成しによって再びゼボットの元に戻ってきます。
すると、気を失っていたエリーが再びゼボット(死体)を見て看病を始めます。
やはり、エリーには現実を受け止めることはできなかったのでしょう。仕方ない事です。
そしてゼボット自らが発明した調理器でスープを作るエリーに話しかけると、
それまでと同じ、スープを飲めばゼボットは元気になるという、片言を喋るのですが最後に、
「・・・アリガトウ。」
と言います。感謝の気持ちはエリー自身、ゼボットには言っていたのかもしれませんが、
赤の他人である主人公達に向けて放たれたこの言葉の真意を探るに、
心を持たないエリーに、少なからず心が宿ったのではないかとも受け取れます。
(※もちろん筆者の憶測の域を出ません。堀井氏の意図が不明ですし。)
そしてしばらくしてから会いに行くと、
エリーはゼボットに寄り添う形で機能停止しており、動かなくなってしまいました。
機械とはいえその命は永遠ではなかったのかもしれませんが、
その姿はどこか安らかだったと思います。直後にマリベルに話しかけると、
「・・・これで良かったのかもね。」
という事からも、やっと元気なゼボットとエリーは黄泉の世界で再会を果たせたのだと思います。
恋人の死を受け入れられなかった悲劇の技師ゼボット。
恩人の死を受け入れられなかった悲劇のロボットエリー。
ドラクエZを語る上ではもちろん、悲劇のキャラクターとして名前が挙げられることも少なくありません。
作中では、ゼボットの開発したからくり掃除機が改良されて現代でも重宝されていますし、
エリーはからくり技術の発展を望む若き国王や兵士に見本として扱われかけますが
自分達の力で先人の偉大さに近づくべきだという希望を与えました。
エリーは姫でありロボットであり、
またドラクエZの数あるキャラクターの中でも特に深い印象を我々に与えた存在だったのです。