キャラクター商品注文機

 

 

 

 

 

 

 

  1. 2012年になって初のドラえもんシリーズ更新ということで、

    改めまして今年もどうか見捨てないでください。

    新年の挨拶でそれってどうよ。ハルジオンです。







    さて、今回のお話はコミックス28巻より、

    『キャラクター商品注文機』です。

    前回の次にあたるお話なんですが、

    これはこれでまたなかなか面白い話となっています。





    いつもの三行解説

    コレクション自慢に加わろうとのび太が見栄を張り、

    ドラえもんの道具でグッズを大量生産したものの、

    全く売れずに大泣き。





    おや、今回の解説はなかなか良い感じになったぜ!

    では張り切ってどうぞ♪







    まずは下校中の場面。

    ジャイアン、しずちゃん、スネ夫の3人がそれぞれのコレクションを自慢しています。

    このお話、こんな序盤から読者を喜ばせてくれます。

    ジャイアンのコレクション『かめライダー』

    しずちゃんのコレクション『アサレちゃん』

    スネ夫のコレクション『バンダム』

    という30代くらいならピンときそうなネーミングのキャラクター勢揃いです。

    特にスネ夫のなんか、

    某ロボットアニメのパロディですが、

    どっちかというと某大手ゲーム会社の名前にもそっくりです。




    この流れで予想が付くとおり、

    ジャイアンがのび太に何かコレクションをしてるかどうか尋ねます。

    ここでいつも通りスネ夫が

    「聞くなよ。可哀想に、持ってるわけないだろ。」

    という嫌味な発言をかましてくれます。

    するとこれまたいつものパターンで、のび太さん反論。

    「持ってるよ!!皆のを合わせたより、もっともっといっぱい。」






    誰でも嘘と見抜けるほどの見事な見栄っ張りです。

    そして見栄を張った結果、すぐに後悔するのもいつもののび太さんです。

    自室に戻りドラえもんがいる前でわざとらしい独り言。

    「大急ぎで買い集めなくちゃ。でもママが・・・。ママが何と言おうが、買うしかない!」

    「叱られても、怒鳴られても、絶対に買ってもらうんだ。」

    今回ののび太さんはどうやら自分でマジ何とかしないといけない雰囲気を出してます。

    ドラえもんの「何を?」という問いかけを無視してるあたり、マジです。

    のび太がママのいる部屋の前に来ると、

    ママとご近所さんの会話が耳に入ってきました。

    この会話を要約するとこうです。







    世間で流行っている漫画やグッズは、

    のび太の意思を無視してでも買い与えない!

    それが私の教育方針だ!文句あるかボケ!(,,゚Д゚)






    というわけです。

    そろそろ筆者も要約くらいちゃんとやるべきだと書いてから後悔しましたが、

    まぁそれは良いとして、

    流石は野比家の財務大臣を担当するママです。

    ただでさえ財政難の野比家において、嗜好品の類には厳しいです。

    だから流行に疎い家庭になってしまうんですよ。

    おっと、これをママに聞かれたら包丁で眉間を刺されそうですのでこれ以上はやめます。

    さて、この会話を盗み聞きしたのび太はママに相談する事を諦めてしまいます。

    しかし皆が見に来る時間が迫っており、凄く慌てています。

    しまいにはドラえもんに泣きつきますが、

    ドラえもんはママの意見に賛成します。

    ドラえもん曰く、

    コレクションをしたからって偉いわけじゃない。

    だそうです。まぁ確かにそうですよね。

    そういえば筆者も子供の頃、あちこち自転車で駆け回り、

    ゴミ集積所近くにあった酒瓶の蓋を抜き取ってコレクションにしてたことがあります。

    誰にも自慢できないまま押入れに眠っていますが。

    (※このように誰しも1度はこういった経験はあると思うけどどうよ?)





    さて、ドラえもんの説教を尻目に、のび太は貯金箱をひっくり返して全財産を引き出します。

    のび太の全財産は37円

    ノートどころか、メントスすら買えません。

    これでどうしろと。

    のび太さん、本屋の中で立ち往生です。

    のび太の明らかに不審な様子を見た店員さんが、

    売れ残りなら10円で売ってあげるよと言ってくれます。

    その売れ残りは一昔前の本です。その題名がまた凄いの何の。




    『オハゲのO太郎』




    藤子先生、あんたマジでスゲェよ( ´∀`)

    元ネタが自分の作品だけど、挿絵も相まってもう最高です。

    現代っ子はピンと来ないかもしれないけど、筆者として破壊力超絶大です。

    これを見たのび太は

    「あんなの持ってたら馬鹿にされるよ」

    と言って本屋を立ち去りますが、

    藤子先生による分かりやすい自虐ネタと言えましょう。

    自宅にはジャイアンとスネ夫がコレクションを見に来ており、

    のび太が逃げたと判断し、待ち伏せします。

    のび太が帰宅できない状況になり、

    仮に無事に帰ったとしても、翌日の学校で捕まってしまいます。

    捕獲されて馬鹿にされて捨てられて・・・ん?何か違うけど良いや。

    のび太さん、絶望を表現する一言。

    「あ〜、僕はもうおしまいだ。生きる望みを失った。」

    と頭抱えて泣き叫びます。

    コレクションしてないだけで何をそんなに大袈裟な…と思いますが、いつもの事です。





    そしてのび太さん、半分マジだったようで、

    「一思いに轢いてくれ。」

    と言って覚悟を決めた顔をしながら道路に座り込みます。

    相手は乗用車ではなくてラジコンカー。

    この何気なくサラッと提示された1コマがこんなにも面白いとは思いませんでした。

    覚悟を決めたマジ顔ののび太、迷惑そうな表情のラジコンの持ち主。

    そして、『またこの馬鹿何してんだよ』と哀れそうな表情のドラえもん。

    何だろう、この不思議なほどに面白い場面。





    救出されたのび太はドラえもんと一緒にタケコプターで空へ。

    あんな面白い場面を見たドラえもんは

    「馬鹿馬鹿しい。くだらない。呆れた。」

    という、単語なのに相手を打ちのめせる魔法の言葉を投げつけます。

    のび太は情けなさでまだ泣いています。

    部屋に戻るやいなや、

    ドラえもんから予想外の一言が!

    「じゃあね、何か1つだけ僕が買ってきてやる。」

    これにはのび太ビックリです。

    ドラえもん、さらに気前良く誰も持ってないものが良いと助言。

    のび太が要望したキャラクターの名前は『建設巨神イエオン』。

    だからどうしてこう面白すぎるネーミング出してくるんだよ!>藤子先生。

    元ネタの実名知ってたらご飯噴出しますよこれ。






    するとドラえもん、イエオンが表紙になっている本を持ってどっか行きます。

    のび太は、新しいキャラだから販売されていない事を不安に思いながら留守番。

    するとまもなくドラえもんが帰宅し、イエオンスケッチブックを持ってきました。

    表紙を確認すると確かにイエオンです。

    だからこの挿絵が面白すぎるんだって!>藤子先生。

    もうなんつーか、このユーモアに脱帽です。

    のび太は大喜びで、外で待ち伏せしていた男2人に見せに行きます。

    この非売品にジャイアンとスネ夫は超驚愕です。

    しかし一般的にコレクションは、1つのグッズを所持してるだけでは条件を満たしていない わけです。

    1つのキャラがプリントされている、或いはそれと判断できるグッズをいくつも所持することで、

    初めてそれをコレクションと言うわけですよ。

    その定義を用いてスネ夫は、スケッチブック1冊でコレクションとは言わないと反論します。

    これはスネ夫とジャイアンの言い分が正しいですね。





    するとのび太、部屋に戻ってドラえもんにおねだりを始めます。

    ドラえもんも『またかよ(怒)』という感じでいつものリアクション です。

    流石にここまで言われてはドラえもんも断れず、

    「ついてきちゃだめ!」と念押しして部屋を出て行きます。

    のび太は、「ついてくるな」という念押しに疑問を抱くわけですよ。

    『行くなよ!絶対に行くなよ!』というフリですね。わかります。

    秘密をのび太に知られると面倒だ何だとブツブツ言いながらドラえもんは秘密の場所へ行きます。

    のび太が尾行しているとも知らずに・・・。





    そして塀に設置した壁紙ハウスという道具の中に入っていきます。

    (※この道具名はよく覚えてないので仮名としてください。)

    その中に入ったドラえもんは、

    わざわざ『キャラクター商品注文機』 という道具名を言い、

    わざわざ把握してるはずの道具の説明までご丁寧にしてくれます。

    独り言だとしてももっと他にあるだろ>ドラえもん。

    とりあえず道具の説明をしますと、

    機械に内蔵されているwebカメラにキャラクターを見せて、

    商品名が書かれているボタンを押すと、

    カメラに見せたキャラのグッズを作ってくれる 法律に違反しそうなハイテクマシンです。

    その道具の使い道を知ったのび太は、ドラえもんに気付かれないうちに部屋へ戻り、

    ドラえもんが用意したプラモとポスターとペンダントを見て喜びます。

    知ってるくせにぃ〜>のび太。






    そして外でやっぱりまだ待ち伏せていた男2人に見せびらかし、

    ジャイアンとスネ夫も流石に羨ましいと言ってしまいます。

    どこで売ってるか知りたい2人は、のび太にお願いしますが、

    そもそも非売品 なのでもちろん教えません。

    それ以前に著作権違反じゃ・・・ おっと、口が滑りそうでした。

    で、気分のよくなったのび太は、

    30分後に空き地で、色んなグッズの大売出しをするから来いと言います。

    商売すんな!>のび太。





    のび太が持っているグッズを、喉から手が出るほど欲しいジャイアンとスネ夫は、

    家に戻って小遣いを持ってくるようです。

    さて、こう宣言したからにはのび太はグッズの生産作業にはいります。

    「いくらでも作れるもんね。」という、

    資本が必要な一般企業家が激怒しそうな発言 をかました後、

    機械に表示されているゲームと書かれたボタンを押します。

    するとボードゲームが飛び出してきました。

    その名も『のび太ゲーム』。

    何でしょう、凄くクソゲー臭がする んですけど・・・。

    のび太は、自分がゲーム化された事に驚きます。

    内蔵されたカメラに自分が映ったために、自分のグッズが完成したのです。

    これにはのび太も感激です。

    「凄い!のび太商品なんて、世界のどこにもないぞ!!」

    まぁ商品化するほどの魅力的価値があるのか疑問ですし、

    そもそもの話、その商品に需要が存在しているのかどうかも怪しい です。

    (※需要とは?・・・端的に言えば、商品を買う側の人数や意欲の大きさなどのこと。)





    次々と商品化を夢見るのび太は、

    「可愛くて、格好良くて、皆大喜び間違いなし!!」

    と、勘違いもはなはだしい妄想 を叫びます。

    ではここで、のび太ゲームがどういうものかを説明します。




    のび太ゲームとは、

    スリルいっぱいののび太の1日をボードゲームで体験するものです。

    ママや先生に叱られ、スネ夫やジャイアンに虐められ、

    車にはねられ、犬に噛まれ・・・。





    上記は、本編の原文そのままですが、

    要するにプレイヤーはのび太のコマを操作して目的地を目指しますが、

    道中、ママや先生や犬などのコマを避けていく必要があるような感じでしょうね。

    それにしても、ボードゲームの描写を見る限りでは、敵多すぎます。

    これ売れるのか?




    のび太はこのゲームはつまらないと判断し、他のグッズを生産し始めます。

    そこへドラえもんがやってきて、のび太の大量生産作業を見て驚きます。

    ドラえもんは注文機なので、後で料金を支払う羽目になることを伝えます。

    ということは、先ほど生産したイエオングッズも料金が発生することになりますが、

    それはドラえもんが自腹を切ってくれたという事でしょう。優しいなぁ君。

    そんな事はお構いなし状態ののび太は、

    「良いんだ。皆に売って、大もうけするから。」

    と、サバサバした返答をします。

    ドラえもん、激怒して部屋から出て行きますが、ドラえもん読者の方々ならもうお分かりでしょう。

    これが死亡フラグだということを。






    さて、場所は空き地。

    のび太が風呂敷を敷いて商品を並べ、のび太グッズを販売します。

    珍しい品がいっぱいあるから早い者勝ちだよと宣伝します。

    噂を聞きつけた子供たちが駆け足で空き地にやってきますが、

    その反応は悲惨でした。





    ジャイアン
    「のび太のプラモや超合金!?」


    スネ夫
    「そんなかっこ悪いもの、タダでもいらないや!!」





    皆さん想像してみてください。

    ガンプラやアニメキャラのフィギュアにまぎれて、

    のび太のプラモが堂々と置かれている光景を。


    カオスですよね。

    ジャイアンとスネ夫の驚きと呆れの反応は正しいと筆者は思うわけです。

    誰に需要があるかをしいて言うならば、

    投げて遊ぶことを目的とするチビッ子くらいでしょう。

    さらに他の子供たちも、のび太グッズには批判的で、

    のび太鉛筆には

    「字が下手に書けそう。」

    のび太ノートには、

    「成績が下がるんじゃないの?」

    という忌まわしいほどの酷評っぷりです。

    確かにこれを学校で使ったら笑われてしまいそうですし、

    クラス全員が使った場合は、ちょっとした宗教の臭いがしそうです。

    子供たちの反応にのび太は悲しげな表情を浮かべますが、

    有名な『孫子兵法』の一部を取り上げるならば、

    勝算が無いのに戦って勝てるはずがないわけです。

    ビジネスでは、リサーチや購買意欲調査を行うなどして、

    市場で売るかどうか、生産量はどうするかを判断します。普通ならば。

    のび太はビジネスに失敗しますが、

    これは自分のグッズに自己満足した結果

    ヒットするだろうという希望的観測を主軸にしてしまったために起こった悲劇だと思います。





    しまいには、しずちゃんにまで逃げられます。

    「女の子向きの品もあるんだけど。」

    と必死にアピールする敗北者(のび太)ですが、

    その両手に持っているのは、のび太人形と、のび太がプリントされているパンツです。

    所持したくないし履きたくない(#゚Д゚)

    というか、その人形はどう見てもダッチワ・・・あぁ、スイマセン自重します。




    瞬く間に子供たちは帰り、

    残されたのはのび太と1つも売れることの無かった商品だけ。

    売れなかったということはつまり、売り上げは0円。

    そしてグッズの注文代金は支払う羽目になるのですから、

    大赤字です。企業なら倒産レベルです。

    のび太は自分の部屋に戻り、

    ドラえもんに「何とか返品できないかしら。」と泣きつきます。

    ドラえもんは、一切忠告を聞かなかったのび太に対して怒り覚めやらず、

    「もう知らねぇよボケ!」という感じの表情で無視します。

    のび太の隣には、見向きもされなかった商品の山だけが残ったとさ。

    めでたしめでたし。







    という感じの話でした。

    面白い描写やネーミングが多数登場したため、この作品は読んでて普通に笑えます。

    まぁパロディはドラえもんに限らず、漫画界では珍しくないほどに起用されてますが、

    藤子先生ならではの描写も相まって、その破壊力は絶大だと思います。

    後半ではのび太の悲惨すぎる商売の光景が映し出されました。

    商品を扱うにはニーズに応える応用力や、

    地道なリサーチ活動が必要であることを表現していると感じました。

    『孫子兵法』における

    勝算を得ない限りは戦ってはいけない、

    情報を駆使して勝機を得るべし、

    戦況が悪い場合は速やかに撤退するべし、


    といったものもビジネスでは応用できるものですから、

    のび太の失敗はこの応用が全く生かされなかったことですね。

    まぁ撤退する以前の問題だったわけですけど。





    普通に笑える作品だからこそ、ドラえもんはより味わいある作品になってるんだろうなぁ。


     

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